花岡院長インタビュー|哲学講師から学んだ「人生のやりがい」(後編)
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花岡院長インタビュー|哲学講師から学んだ「人生のやりがい」(後編)

現在6組に1組が不妊治療を受けると言われる日本。

妊活や不妊治療の現場の医師たちは、どんな想いを持って最前線に立っているのでしょうか。

「はなおかIVFクリニック品川」の花岡正智院長のライフストーリー、後半は「哲学講師」から学んだ「人生の意味」について明かします。

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目まぐるしい技術の進化

──花岡先生が、技術の進歩で驚いた点を教えてください。

1つは、タイムラプスシネマトグラフィーの登場です。5年程前から急速に普及し始めているのですが、この技術によって受精卵が成長していく様子が刻々とわかるようになったのです。

これまで言われてきたことと違ったことも多く、未知の領域だった分裂の過程が明らかになりました。これには専門家も本当に驚いたのです。

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もう一つは、PGT-Aという着床前胚染色体異数性検査です。

体外受精は年齢が上がるほど妊娠率は低くなり、流産率は上昇します。最大の原因の一つが、受精卵(胚)に起きる染色体異常です。特に「染色体の数の異常」が原因だということが明らかになっています。
着床前診断自体は、20年以上前からいろいろな形で用いられてきた技術。

ただこれが、ゲノム配列を高速で読める「次世代シーケンサー」を使えるようになったことで、受精卵の状態がより正確にわかるようになってきました。

次世代シーケンサーの登場によって、遺伝解析できる範囲がこれまでよりずっと広がったのです。

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受精卵のことはここ20年でとてもよくわかるようになりました。その一方で、意外とわからないのが受精卵が着床する子宮のこと。体内にあるので、確かに調べるのに限界があるのです。

例えば、受精卵の準備がOKとなっても、子宮の受け入れ準備ができているかは別問題。

着床できる状況かどうかをチェックする検査があるのですが、妊娠を目指すのであれば、子宮のこともよく知らないといけない。

受精卵で今わかっていることを100とすると、子宮のことはまだ半分くらいしかわかっていないのではないか、と感じています。

この部分の解明が進むことで、妊娠率も上げられると思っています。

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次世代をお助けする

──どんな時に、不妊治療の医師としてやりがいを感じますか。

大学受験の予備校で、半分しかまともな授業をしないけれど、学生から非常に人気の講師がいました。

哲学を専攻した英語の先生で、「君たち、なぜ生まれたと思う?」と聞いてきたのです。

「なぜだろう」と考えていると、「生まれたのは偶然だ。20世紀の哲学は人はなぜ生まれたのかを考える学問だったが、その意味で20世紀の哲学は失敗しました」と。

「これは本当か」とうろたえたのですが(笑)。

先生の言いたかったことは、なぜ生まれたのか答えを見出すより、生まれた後に何をするかに意味がある、と言いたかったのだろうと思います。

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後世に何を残すか、何を作るか、何を生み出すか。

どんなお仕事であれ、次の世代を少しお助けできるのは名誉なことだと感じます。不妊治療に関わる者としては、次の世代の子供たちの誕生をお助けする。

そこに関われていることにはやりがいを感じますね。

敷居を少しでも低く

──日本は世界一の不妊治療大国と言われています。

不妊治療の話は、とても敷居が高い。だから、年齢が高くなってクリニックにかかることが多いのです。

早い時期に体の仕組みや、不妊の情報を得て、クリニックに来てくれたらいいなと思っています。

また、私たちがやらなければいけないのは、医療を提供することだけでなく、啓蒙することです。

その意味で、クリニックを作る時に「敷居を下げる」ということはとても意識しました。

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高いレベルの医療は当たり前。

機械、培養液など、技術の進歩で新しい優れたものがどんどん出てきます。世界の動向をキャッチするためにも、全身を使って、ハリネズミのようにアンテナを立てておかないといけない。

でも、良い医療、いい情報を持っていても、患者さんがそこにアクセスできないと意味がないのです。

だから、患者さんが話しやすい、受診しやすい環境を作りたいと思っています。

──どのようにそういう環境を作っていますか。

患者さんがリラックスできるように努めているのと、スタッフと一緒に話し方のトレーニングなどもしています。

患者さんがどんな方なのか把握するのはとても大切。何回か来院するとわかってきます。

その人が、どんなものを求めているのか。

例えば、悩みを聞いて欲しいのか、それとも結果をストレートに欲しがっているのか。個人のニーズによって、私たちも柔軟にあり方を変えることが必要だと思うのです。

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プロ級の腕前

──週に6日勤務されていると聞きました。

そうですね、大体1日の患者さんは70〜100人くらいです。それでも空いた1週間の1日は、スキーをして思う存分体を使っています。

スキーをしないと、逆に体が疲れてしまう(笑)。

年間50日くらい行っていて、スキー検定1級の上の、「テクニカルプライズ」という資格も取得してしまったほど入れ込んでいますね。

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1級の1%だけが次に進める狭き門だと言われていますが、かれこれ30年続けていて、「セミプロ」の域に達しました。

非日常的な空間をうまく取り入れて、ONとOFFを維持、明日も頑張ろう、となりますね。

妊娠は「みんなごと」
最後に一言、言わせて頂いてもいいでしょうか(笑)。

よく患者さんの女性から、「不妊治療で夫が協力してくれない」という話を聞きます。

これはとても間違っている話だと私は思っています。

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妊娠や出産は、妻にお願いしておくと、子供を抱えて帰って来る、ということではありません。

子供は、夫婦二人のお子さんです。相手の男性の方にも「自分の子供」という責任を持って治療に挑んで欲しいと思うのです。

また、女性の方も「自分だけで判断しなくては」と抱え込むのでなく、周りのみんなと一緒に、将来の家族計画について考えて欲しい。

もちろん、そこに私たちも存分に巻き込んでください。

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Grace Bank(グレイスバンク)は、「女性が願うあらゆるライフプランが社会的制約なく叶えられる未来の創出」をミッションに、女性の医学的機能や妊孕性についての啓発活動を行いながら、みなさまに安心してご利用いただける「選択的卵子凍結」のプラットフォームを整備していきます。 ​