杉山医師インタビュー|少子化、待ったなしの日本が本当にできること(後編)
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杉山医師インタビュー|少子化、待ったなしの日本が本当にできること(後編)

患者が自由な治療を選べるように──

杉山産婦人科では、患者が主治医を毎回ごとに選べる「指名制」システムを導入しています。

さらに杉山医師は、患者が自由な治療を選べるようにするためには、国の法整備も重要だと言います。日本では、来年4月から始まる不妊治療への公的医療保険適応を巡り、活発な議論が繰り広げられています。

杉山産婦人科・杉山力一医師のライフストーリー、後編は、少子化の日本が本気で考えるべきことについてお話を伺いました。

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現場主義であれ

──医師として治療と経営、どうバランスを取っていますか。

スタッフは200人以上います。1人で全てを管理するのは不可能ですよね。ですから、どちらかというと「大雑把な管理」をしています(笑)。

各部門に2〜3人の責任者を置いて、その人たちと密に連絡して極力、現場に任せるようにしています。すると、現場も何がベストなのか考えて、自立して動いてくれる。

コロナで実行できていませんが、「誕生日会」、「納涼会」、「忘年会」なども多く開催し、互いを知り合えるようにしています。これらのイベントで中堅以上の人たちと話す時の私の決め事は、仕事のことは一切話さないということ。

話すと結局、説教になってしまうので(笑)。あくまで現場主義であれ、そんな思いを貫いています。

理想的なのは「補助金」

──今、医療活動以外に、やりたいことがあると聞いています。

2022年4月から、不妊治療に保険が適用されます。どういうことかというと、今、不妊治療の体外受精や顕微受精などは、保険が適用されず自由診療になっています。

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「自由診療」であるということは、治療の幅が広くなることを意味します。

例えば、アメリカで優れた薬が開発されたり、良い治療方法が出た場合、医師は現在であれば、厚生労働省などの許可を取らずに自己責任で輸入ができるのです。学会に行って学んだことを、患者さんの同意さえ得れば、すぐに治療に生かせる。

これに保険が適用されると、厚労省の許可が下りた薬剤や治療方法しか使えなくなります。新しく許可を得るには5〜10年かかってしまう。そうするとアメリカから随分と遅れを取ることになりますし、新しい医療がストップしてしまうのです。

今では一般的に使われる「卵子凍結」の保存技術は、実はメイド・イン・ジャパンの技術です。保険が適用されてしまうと、こういった新しい技術を使うことはできません。日本発のイノベーションが止まってしまうということにもなるでしょう。

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私は、今ある不妊治療への「補助金制度」が理想の形だと思っています。ある程度の規制の下で、医者の裁量と責任で患者に沿った治療ができている。

また、保険適用になると、お金を持っている人だけが新しい医療を使える状況になってしまいます。厚生労働省の認可が下りていない、最先端の医療を受けたければ、保険を使わずに全部自費でやってくださいということになるのです。

裕福な人だけが、望む不妊治療を受けられるようになるのは違うと感じます。今の補助金制度では、患者さんの懐事情に関係なく、患者さんが望む不妊治療が受けられています。

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政府と厚生労働省が保険の適用を巡って話し合いを進めていますが、週に何度も私も顔を出し、議論に参加しています。

制度は一度決まると、なかなか変えられない。ここはしっかりと設計しないといけないと責任も感じるのです。

子どもを持つ選択肢を

──そのほか、不妊治療に関わる課題点はあるでしょうか。
治療というより、やはり法整備の方に課題を感じています。治療において、妊娠が難しい人が取り残されているように感じるのです。

精子や卵子がなかったり、セクシュアルマイノリティのLGBTQの人たちは、第三者から精子や卵子の提供が必要になります。また、代理母も必要な場合がありますが、これらの問題を法的に議論するような場所がありません。

少子化対策、というのであれば、こういうところも一緒に含めて考えなくてはいけないと思うのです。

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──また、女性の社会的な卵子凍結への意識は変わってきていますか。

卵子の凍結についての意識は高まっていると感じます。やはり、現実と理想のギャップが大きいのですよね。「30歳ぐらいで子どもを産むのが理想」、といったところで30歳になって結婚する手段が増えるわけではありません。

では、25歳で結婚しようと思うと、現実的に生活できるのかという話になもなります。女性も仕事が面白くなって脂が乗ってくれば、婚期や妊娠時期が遅れてしまうというのは仕方のないことです。

ただ、僕は不妊治療にかかる患者さんをたくさん見てきているからこそ、卵子凍結を20代や30代前半でする患者さんには、「この卵子を使わないで妊娠しましょうね」と言っています。

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結婚して自然妊娠できるのであれば、体にとっても負担は減るしベストです。体外受精はできればやらない方がいい。

将来、使うために保管するのでなく、あくまで保険として考えて欲しい。それが本当の未受精卵凍結だと思っていて、私が若い女性たちに伝えたいことなのです。

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Grace Bank(グレイスバンク)は、「女性が願うあらゆるライフプランが社会的制約なく叶えられる未来の創出」をミッションに、女性の医学的機能や妊孕性についての啓発活動を行いながら、みなさまに安心してご利用いただける「選択的卵子凍結」のプラットフォームを整備していきます。 ​