両角院長インタビュー|「弟妹がほしい」女の子の願いに号泣 (後編)
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両角院長インタビュー|「弟妹がほしい」女の子の願いに号泣 (後編)

両角医師が、1日に数百という患者さんと接する中で、特に記憶に残っているのが5歳の女の子です。

その女の子がしたためた手紙に思わず泣いてしまったといいます。

診察の中で日々どのようなことを感じ、患者さんに接しているのでしょうか。両角レディースクリニック・両角和人医師のライフストーリー、最終話は患者と向き合う心構え、そして若い世代に伝えたいことをたっぷりと伺いました。

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忘れられない手紙

1週間に来ていただく患者さんは800人ほどいます。

それぞれの方と様々な思い出がありますが、2年くらい前に、私のクリニックで妊娠されたお母さんが、2人目が欲しいと治療に来たのです。

そのお母さんが、私たちのクリニックで最初に出産した女の子は5歳になっていました。その小さな女の子から突然お手紙をもらったのです。

「きょうだいがほしいです。もろずみせんせい、わたし5さいになったよ、おしごとがんばってね💗」と。

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まだまだ拙い字でしたが、彼女の気持ちがしたためられていました。感動して、泣きながら読みました。

こんなお手紙をもらったことはありませんでした。これは、なんとかしないといけない、結果を出さなければいけない、と強く思ったのです。

結果が出ない悔しさ

私たちもベストを尽くしますが、必ず結果がついてくるわけではありません。辛いのは、患者さんもこちらも頑張っても結果が出ない時です。そういう方は、残念ながらいらっしゃいます。

患者さんから、「ここに来て良かったです。治療に後悔はないです」とよく言われるのですが、これには号泣してしまいます。

こういう患者さんはだいたい4年間ほど通っている方が多いのですが、医師として情けないという気持ちと、一体何のためにやっているのだろうと思うと切なくなってしまうのです。

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どうしたら、少しでも患者さんに寄り添った治療ができるのか。

高い技術を提供するのは当然ですが、そこにちゃんと医療従事者たちの気持ちが伝わらないといけないと私は思っています。

心を優しく労わる特別な部屋

私たちのクリニックには特別な部屋があります。

患者さんに「妊娠できなかった」ということを伝えるのですが、これは患者さんにとって本当に辛い瞬間です。本当は泣きたい気持ちなんですよね。

結果を伝えるだけが医療ではありません。

この特別な部屋は防音になっています。必要があれば、看護師は患者さんに付き添って一緒にこの部屋へ行きます。そこで、気持ちが落ち着くまでいてもらいます。時には好きなだけ泣いてもらうこともあります。看護師は肩をさすってただ寄り添う。言葉はいりません。

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クリニックのスタッフが、患者さんの様子をよんで、気持ちが落ち着くまで一緒にいようと判断しています。話を聞いてあげて患者さんに共感するというのが、何より大切だと思います。

若い世代への啓発が大切

日本の不妊治療の成績は海外と比べると低いのですが、その理由は、不妊治療を始める年齢が日本の方が平均5歳くらい高いからなのです。

高齢になってから不妊治療を始めるので、成績が落ちてしまうというのが現状としてあります。

そこを改善するためにも、早くクリニックにかかってほしいと思います。患者さんの多くが「もっと早くクリニックに来ればよかった」とおっしゃいます。

不妊にまつわる知識を早いうちに持って、治療を早く始められていたら結果が変わっていたかもしれない。

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私のクリニックにいらしたカップルで、10年間避妊してきたカップルがいました。そろそろ子どもが欲しいと思って来たら、男性が無精子症だったことがわかったのです。

それならば、10年も避妊したのは何だったのかと。もっと早く来れば良かったと患者さんは漏らしていました。知らなかったというのが一番残念なことなのです。時間の取り戻しはできないのですから。

ここには、患者さんだけでなく私たち医療関係者、そして国にも「若い世代への啓発」という点で責任があるでしょう。

「無料のAMH検査」で失敗

私がクリニックの傍でやりたかったこと、それが無料のAMH(アンチミューラリアンホルモン)検査です。

AMH検査は、血液検査を通してどの程度の卵子が卵巣の中に残っているかを調べ、妊娠するために卵巣が予め備えている能力を知るものです。

妊活、または将来の家族設計に役立てられるというメリットがあります。

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去年、都内の女子大にAMH検査を無料で受け付けますというメールを100校以上の学生課に送りました。

何とか若い人たちに、自分の妊娠する力がどれだけあるのかといったことを知ってほしいという一心だったのですが、大学からの返信はゼロでした。

確かに、大学では学業が第一。そこで、妊娠する力がどれだけあるかを知りましょう、と真正面から切り込んでも、大学側は困惑したのでしょう。

AMH検査の無料作戦は失敗しました。

でも、こうやって一念発起で行動したのも、日本の不妊治療の現状を知る医師として、どうにかして現状を変えたいと思っているからなのです。

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究極の「論文マニア」

実は論文を読むのが趣味です。1日1〜3時間読んだりしています。週6日クリニックで勤務していますが、ありとあらゆる時間を捻出しています。

3年前ほど前に、健康に気をつけようとランニングマシーンを買ったのですが、日曜日は5時間くらいかけて論文を読みながら30キロほど走る時もあります。

世界の技術・研究をキャッチアップしながら、健康にもなれる、一石二鳥です(笑)

最近読んだものの中で、非常に面白い論文がありました(Human Reproduction, Vol.35, No.11, pp. 2613-2618, 2020)。父親の運動量と生まれてくる子どもの性別の相関を見たものです。

チリのプロ男性サッカー選手を調査したもので、多くの運動をこなした選手に、女の子が生まれる確率が高いことが分かったのです。

選手たちから生まれた122人の子どもうち、52人が男の子、70人が女の子でした。

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実は、クリニックでも男女の生み分けをしたいという需要がとても強いのです。そこで、論文の根拠を示して、「女の子が欲しいのであれば、旦那さんに頑張って運動してもらいましょう」と言えたりもするわけですね。

日々の小さな積み重ねですが、患者さんの求める結果に少しでも近づきたい、そう強く思っています。

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Grace Bank(グレイスバンク)は、「女性が願うあらゆるライフプランが社会的制約なく叶えられる未来の創出」をミッションに、女性の医学的機能や妊孕性についての啓発活動を行いながら、みなさまに安心してご利用いただける「選択的卵子凍結」のプラットフォームを整備していきます。 ​